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源泉徴収義務とは

会社設立以前にどこかに勤めていた方は、「給料から色々差し引かれた」という経験をお持ちのことと思います。サラリーマンは自ら納税額の計算をする手間が要らず、原則として税務署に行く必要もないため、納税者としてとても楽な立場にあったといえます。

ところが自分が会社設立すると、今度は雇用する従業員に対して同じことをしてあげなければなりません。すなわち人を雇うということは、税金面では「源泉徴収義務者」になることなのです。所得税法は「給与を支払う場合には一定の所得税を天引き徴収しなければならない」と定めています。

そして天引きしなかった場合には、天引きすべき税金の納税義務を、徴収義務者である会社に負わせることにしています。つまり、従業員に支払う給料から税金を差し引かなくても、税務署に対する直接の納税窓口は源泉徴収役務者である会社になるのです。給料の支払いをするときは、後述する税額を忘れずに天引き徴収しなければなりません。

源泉徴収義務とは、具体的には、所得税の源泉徴収、納税者に代わって支払月の翌月10日に納付、年末調整、源泉徴収の発行といった一連の手続きを指します。なお、これは社員への給与だけでなく、社員への賞与や退職金、税理士・司法書士・弁護士などへの報酬、外部業者への原稿料や写真代など、さまざまな項目に適用されます。

また、従業員等に給与を支払う事務所や事業所を設立した場合、「給与支払事務所」としての届出が必要です。支店や営業所がある場合には、それぞれが給与支払事務所に該当しますので、それぞれの住所地を管轄する税務署に「給与支払事務所の開設届」を提出してください。届出期間は、給与支払事務所の開設日から1ヶ月以内となっています。

給与からの源泉徴収

従業員に給料を支払うときは、その支払額から所得税を天引き徴収しなければなりません。また、会社が社会保険に加入したときは、健康保険や厚生年金の保険料、雇用保険料なども差し引く必要があります。さらに住民税の特別徴収義務者であれば、住民税も差し引かなければなりません。給与計算はなかなか手間のかかる事務作業なのです。

コンピュータを利用して給与計算を行なうのであれば、初期設定さえ正しく行なえば、徴収する税額は正しく計算されますが、手計算をするときは、一つひとつの項目について必要な資料を集めることから始める必要があります。ミスがあると、従業員との信頼関係を著しく損なう結果になりますので、くれぐれも慎重に行ってください。

まず必要なものは「源泉徴収税額表」です。税務署に行けば無料でもらえますが、給与計算の手引き書などの書籍にも巻末に資料として添付されているケースが多いです。次に「扶養控除等申告書」があります。これも税務署で無料配布が受けられるものです。従業員に年収103万円以下の配偶者や子供などの扶養する家族の氏名等を記入してもらう用紙です。そして最後に「給与明細書」です。文具店などで購入し、従業員別に支給額や控除税額などを記入して本人に交付します。従業員に支払う給与の金額が決まったら、「源泉徴収税額表」を使って次の手順により差し引く税額を調べます。

「月給」か「日給」か
給与を1か月ごとに支払うときは「月額表」、働いた日ごとに支払う場合は「日額表」を使います。1週間ごとに支払う給与も、日割計算して支払う給与も「日額表」によります。

「甲欄」か「乙欄」か
月額表にも日額表にも、それぞれ「甲」と「乙」というニつの欄があります。前者は、本人から「給与所得者の扶養控除等申告書」が提出されている場合、後者はその提出がない場合に用いる欄です。従業員が2か所以上の勤務先から給与収入を得ている場合、扶養控除等申告書はいずれか1か所にしか提出することができません。

その唯一の勤務先においては「甲欄」で、2か所目以降の勤務先はすべて「乙欄」で源泉徴収税額を計算するのです。同じ給与額でも、「乙欄」の税額のほうが高く設定されています。したがって乙欄適用者に誤って甲欄で源泉徴収すると、不足税額が生じることになるので注意が必要です。 「日額表」にはさらに「丙欄」という区分があり、これは日雇いの人や短期間雇い入れるアルバイトなど一定の給与を支払う場合に使用します。

「甲欄」適用者の扶養家族は何人か
「乙欄」の税額は給与の支給額に応じて単一の税額が設定されていますが、「甲欄」ではその者の扶養する親族の人数に応じて税額が変化します。したがって、扶養控除等申告書に記載された扶養親族の人数に応じて、適正な源泉徴収税額を求めなければなりません。

給与以外の源泉徴収と年末調整

賞与から源泉徴収する税額は、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って計算します。まず賞与を支給する月の前月の給与から社会保険料を差し引いた金額を計算し、これを該当する金額ランクに当てはめ、同じ段に記載されている率を支給する賞与の金額に乗じた金額が、賞与から源泉徴収する税額になります。

給与以外にも源泉徴収しなければならない項目があります。その代表的なものが税理士や弁護士への「報酬」です。徴収する税額は原則として支払う金額の10%相当額です。たとえば報酬手取り5万円とするなら、支給額は5万5555円」、源泉徴収する所得税額は5555円となります。このほかにも司法書士や社会保険労務士への報酬も、源泉徴収の対象とされています。

また、従業員に1年間給与を支払ってきたら、12月最後の支給時に「年末調整」をする必要があります。これは従業員ごとに、1年間の給与の支給額とそこから天引き徴収した所得税額とを比較して、正しい年税額に比べて超過額があれば本人に還付し、不足額があればこれを徴収する制度です。このとき、前職がある人に対しては、前の職場での源泉徴収票に記載の支給額などを加算して調整しなければなりません。


源泉徴収した税金の納付

会社が従業員の給与や税理士・司法書士などの報酬から差し引いた源泉徴収税額は、月末で締めて集計し、翌月10日までに税務署に納付することになっています。その手続きは、税務署に用意されている「徴収高計算書」という用紙に、支給した給与等の額、源泉徴収した所得税額等を自ら記入して、金融機関に持参して納付する、というものです。

このように、毎月10日までに納税するのが原則ですが、従業員数が常時10人に満たない小規模な事業所は、あらかじめ税務署に届出をすれば1月から6月までの上半期分をまとめて7月10日まで、7月から12月までの下半期分をまとめて翌年1月10日までに納付するという方式を選択することもできます。これを「納期の特例」といい、零細会社ではぜひ採用したい制度です。

適用を受けるには、あらかじめ管轄の税務所に、「納付期限の特例の承認」を申請する必要があります。さらに、多忙な経営者の事情を酌んで、「納付期日の特例」も設けられており、前もって管轄の税務署長の承認を受けておけば、1月10日の納付日に限り1月20日とすることも可能です。

承認を受けるにあたっては、それぞれの制度で税務署所定の申請書が用意されていますが、2つの特例を同時に申請できる用紙もあります。期日、添付書類などは特にありません。給与支払事務所の開設届と同時に提出しておくのがよいでしょう。

 



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